慧音編
上白沢慧音は夜に近づくにつれて込み上がる衝動を目の前にして、一人悶々としていた。
それはふらりと自宅に訪れては言葉を交わす一人の少女、藤原妹紅のことを意識してしまったからだ。
どうしてなのか、彼女のことが気になる。
もっと声を聞きたい。あわよくば――
ふと、そんな考えが慧音の脳裏によぎるが否定をする。その時、目の前にはもう一人の自分がいた。
今夜は――満月だ。
阿求編
稗田阿求は暇を持て余していた。
同じことを繰り返す、続けるだけの毎日。それだけでは物足りなくて。
そんなある日、屋敷には友人である本居小鈴が訪れていた。今日もまた、気になる書物を持ってきたのだろう。彼女は嬉々として内容を話し始め、気が付いたら深夜になっていた。
このまま暗い夜道を帰らせるのは忍びない。阿求はある「思いつき」を胸に小鈴を屋敷に泊めることを提案する。
今夜は――面白くなりそうだ。
ふたつの欲望が蠢き、月夜に照らし出される。